2023年10月からインボイス制度が導入されることになりました。ニュースで聞いたことはあるけれど、インボイス制度とはどのような制度なのでしょうか。
今回は、インボイス制度は何のために導入されるのか、企業はどのような対応が必要なのかをご紹介します。
インボイス制度とは?
インボイスとは、「適格請求書」のことです。正確な「適用税率」や「消費税額」などを明記し、「適格請求書発行事業者」が発行した請求書が「適格請求書」になります。
インボイス方式では、現行の区分記載請求書に記載しなければならなかった6項目に加え、新たに3項目を追加する必要があります。
区分記載請求書のころから記載が必要だった6項目
・発行者の氏名または名称
・受領者の氏名または名称
・取引年月日
・取引の内容
・軽減税率対象商品である旨
・税率ごとに区分して合計した対価の額
インボイス方式で新たに求められる3項目
・登録番号
・適用税率
・税率ごとに区分した消費税額等
新たに求められる3項目の中にある「登録番号」は「「適格請求書発行事業者(登録事業者)」に付与される番号です。登録事業者になるためには「適格請求書発行事業者の登録申請書」を所轄の税務署へ提出しなければなりません。
インボイス制度の下では、インボイスの発行または保存があれば消費税の仕入額控除を受けることが可能す。消費税の仕入額控除とは、消費税の課税事業者が課税売上にかかる消費税から課税仕入にかかる消費税を差し引いて納税することです。
逆に、インボイスの発行または保存がなければ、消費税の仕入額控除を受けることができません。
インボイス制度は売り手にも買い手にも、双方に適用されます。売り手は買い手から求められればインボイスを発行しなければなりません。一方、買い手は原則として売り手が発行したインボイスを保存しなくてはなりません。
インボイス制度はなぜ必要?インボイス制度導入の背景
インボイス制度が導入される背景には、軽減税率8%と標準税率10%の二通りの税率が運用されるようになったことがあります。
事業者は2つの税率があるために、消費税を申告する際、異なる税率ごとに経理処理を行う必要があります。そのために現行の「区分記載請求書等保存方式」が仕入税額控除の要件となったのです。
しかし、この方式では仕入税額控除の対象外である免税業者や消費者からの請求書も含めることが可能でした。そのため、実際よりも控除できる仕入税額が多く計上され、消費者から預かった消費税を気づかないうちに納付せず、事業者の利益にしてしまうということが発生したのです。
そこで、正確な税率と消費税額を確認し、不正を防ぎ、消費税をきちんと納付させるため、新しい仕入税額控除要件としてインボイス制度が導入されることになったのです。
インボイス制度が及ぼす影響
それでは、インボイス制度が導入された場合、企業にはどのような影響が出てくるのでしょうか。
請求書様式の変更
現在の「区分記載請求書」の記載事項に加えて新たに「登録番号」「適用税率」「税率ごとに区分した消費税額等」の3項目を追加する必要があります。パッケージ型の会計ツールや独自に設計したシステムを使っている場合は、新たに購入したり作り替えたりする必要が出てきます。
免税事業者への影響
免税事業者とは、年間の課税売上高が1,000万円以下の事業者を指し、納税義務が免除されています。しかし、免税事業者は適格請求書発行事業者になれません。
免税事業者は、インボイスを発行できる適格請求書発行事業者になるために、課税事業者になる必要に迫られる可能性があります。
適格請求書発行事業者になると、年間の売上高が1,000万円以下であっても免税事業者にはなれず、消費税の申告義務が発生しますが、インボイスの発行ができないと、課税事業者と取引ができない事態も想定されています。
免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置の期間も設けられていますので、各事業者の実態に沿って対応を考える必要が出てきます。
経理事務の煩雑化
前述のように免税事業者は適格請求書発行事業者になれないため、インボイスを発行できません。そのため、売り手に免税事業者がいた場合、買い手の経理担当者は免税事業者と課税事業者を分けて経理処理をする必要が出てきます。経過措置期間には仕入税額相当額に対する割合も決まっていますので、経理事務は煩雑になることが予想されます。
インボイス制度導入に向けて対応すべきこと
インボイス制度に対応するために必ず行わなければならないポイントをまとめました。政府の問合せ窓口もありますので、2023年10月の導入に向けて準備を進めましょう。
登録申請書の提出
適格請求書発行事業者登録のために、申請書を提出します。
申請先は納税地を所轄する税務署長です。登録用紙は国税庁のWebサイトからダウンロードできます。また、e-Taxによる登録申請手続きも可能で、画面に表示された質問に回答しながら入力するとスムーズに申請できます。
なお、免税事業者が登録申請をしようとする場合、事前に「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる必要がありますのでご注意ください。
会計ツールの確認
現在利用されている会計ツールがインボイス制度に対応できているか確認します。
クラウド型の会計ツールを利用されている場合は、法制度の変更に合わせてシステムが変更されますので問題ありません。
パッケージ型や独自開発の受発注システムや請求書管理システム、旧式のレジなどはインボイスに対応していない可能性があります。対応していない場合、買い替えや入れ替えを行わなければなりません。
システムの入れ替えには大きなコストがかかります。この機会にクラウド型のサービス導入を検討なさるのも良いのではないでしょうか。
クラウド型会計ツール導入についてはシステムラボにご相談ください。
なお、インボイス制度の詳しい内容についてはお近くの税理士や行政の問い合わせ窓口までお問い合わせください。